前代未聞!?「塩の加水分解」を制覇する原点、此処に在り!〔その弐〕.

今回も塩の加水分解について、塩の加水分解:〔その弐〕として話を進めて行きたいと思いますが、〔その壱〕では、塩の加水分解に必要な一連の流れを記載してありますので、そちらの方を御覧頂けたら大筋理解出来るのではないかと思います。

また前回、弱酸(CH3COOH)と強塩基(NaOH)の中和反応により生成する塩である酢酸ナトリウム:CH3COONaが中心であったのに対して、今回は強酸(HCl)と弱塩基(NH3)の塩である塩化アンモニウム:NH4Clが塩の加水分解の中心となっています。

塩化アンモニウム:NH4Clは、酢酸ナトリウム:CH3COONaとは真逆的な関係にありますが、この関係を上手く利用して加水分解を攻略して行きましょう!

【✺ 塩の加水分解にも精通しています、常用対数、累乗根の別記事も是非御覧下さい!】

「一刀両断!logが、pHへと導かれる仕組み!?」

「たった1回読めば解る!累乗根とは何ぞや!?」

また、酢酸ナトリウムの塩の加水分解、弱酸・弱塩基のpHについての別記事も是非御覧下さいね!

前代未聞!?「塩の加水分解」を制覇する原点、此処に在り!〔その壱〕

「前代未聞!?弱酸のpH&pOHを制覇する術(すべ)、此処に在り!」

「前代未聞!?弱塩基のpH&pOHを制覇する術、此処に在り!」

1.塩の生成と加水分解!

塩の加水分解において、塩化アンモニウム:NH4Clと酢酸ナトリウム:CH3COONaとは真逆的な関係ですが、生成された塩の分類は同じ分類の正塩として扱われています。

【※ 塩化アンモニウム:NH4Clの塩の分類と、塩の性質(=液性)!】
塩化アンモニウム:NH4Clは、強酸(HCl)と弱塩基(NH3)の反応により、塩の分類は正塩として、塩の性質(※ 液性)は弱酸の塩として生成されるため酸性(弱酸性)を示します!

(Ⅰ):H2O⇔☆H^++★OH^-(※ H2Oは電離平衡状態にある!)

(Ⅱ):HCl(強酸)+NH3(弱塩基)→NH4Cl(※ 正塩)

(Ⅲ):NH4Cl→NH4^++Cl^-(※ 正塩であるNH4Clが完全電離する!)

(Ⅳ):NH4^++H2O⇔NH3+H3O^+(※ 完全電離したNH4^+が(Ⅰ)の電離平衡状態にあるH2Oの水酸化物イオン:★OH^-と反応し合い、これが加水分解となり、水素イオン:☆H^+を放出しオキソニウムイオン:H3O^+となる事によって、液性は弱酸性を示す。また加水分解による平衡状態は左方向へと大きく偏っており、両辺のH2Oを消去し合うと次の様に簡略化出来ます!)

(Ⅴ):NH4^+⇔NH3+H^+(※ 弱酸性)

この様に最終的には正塩である塩化アンモニウム:NH4Clのアンモニウムイオン:NH4^+とH2Oとの加水分解によって液性は弱酸性を示します!

2.加水分解度hによる塩の加水分解の平衡状態と、加水分解定数Khとの関係!

上画像のアンモニウムイオン:NH4^+の塩の加水分解による平衡状態は、弱酸の酢酸:CH3COOHが電離して水素イオン:H^+を生成する反応に良く似ています。真逆的な関係にありますが、水素イオン:H^+が生成されるという点では全く同じである事が理解出来ます。

また、塩の加水分解における加水分解度hは、弱酸の電離度αと同じ役割を果たしていると言えます。そして酢酸ナトリウム:CH3COONaの場合と同様に、頭を紛らわすのが加水分解定数Khだと思われます。よって、ここでも公式を一まとめにしたものが必要になってきます。

これを酢酸ナトリウム:CH3COONaの変形式として使用しました様に、後程塩化アンモニウム:NH4Clでも扱って行きますので御了承下さい。

上画像の分母:c(1-h)より、通常の近似値:1-h≒1を、下記の変形式では理解しやすい様にと、あえてc(1-0)と記載していますので、何卒御了承下さい!
【※ 加水分解定数Khと加水分解度hの関係 & 塩化アンモニウム:NH4Clと、酢酸ナトリウム:CH3COONaの塩の加水分解における相違点!】
Kh=ch^2より、ch^2=Khとすると、加水分解度hは両辺に指数:(1/2)を乗じると求められます!

h^2=Kh/c→h^2^(1/2)=(Kh/c)^(1/2)→h=√(Kh/c) ∴加水分解度h=√(Kh/c)

上画像より、アンモニウムイオン:NH4^+が加水分解されると水素イオン:H^+が生成され、その時の水素イオン濃度:[H^+]の求め方は、弱酸である酢酸:CH3COOHの[H^+]の求め方に良く似ています!

また、酢酸ナトリウム:CH3COONaの加水分解では、まずは水酸化物イオン濃度:[OH^-]を求める事を基本として、最終的にpHを求める手順でしたが、塩化アンモニウム:NH4Clの加水分解では、1番最初で水素イオン濃度:[H^+]を求める事が基本であり、すぐにpHを求める事が可能となります!これも酢酸:CH3COOHが電離によりpHを求める手順と良く似ています!

【※ 塩化アンモニウム:NH4Cl水溶液の水素イオン濃度:[H^+]の求め方!】

(Ⅰ):[H^+]=ch

より、加水分解度h=√(Kh/c)である事から、(Ⅰ)を次の様にも表す事が出来ます!

(Ⅱ):[H^+]=ch=c×√(Kh/c)=√c^2×√(Kh/c)=√cKh  ∴[H^+]=√cKh

また、Kh=Kw/Kbである事から、さらに(Ⅱ)を次の様に表す事が出来ます!

(Ⅲ):[H^+]=√cKh=√c×√(Kw/Kb)=√(c・Kw/Kb)  ∴[H^+]=√(c・Kw/Kb)

(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)より、アンモニウムイオン:NH4^+の加水分解によって生じる水素イオン濃度:[H^+]は次式の様に表せます!

【※ [H^+]=ch=√cKh=√(c・Kw/Kb)】

「※ なお上式は後程、変形式と称するものにも使用致しますので御了承下さい!」

3.塩の加水分解における、加水分解定数Kh・電離定数Kb・水のイオン積Kwの関係を公式化してみよう!

ここでは、酢酸ナトリウム:CH3COONaと同様に、塩化アンモニウム:NH4Clの加水分解に欠かせない2通りの公式がどの様に成立しているか考えてみましょう。

【※ 化学平衡の法則より、電離定数:Kbと水のイオン積:Kwを公式化させる:(その1)!】

[1]:化学平衡の法則を利用する!

Kh=[NH3][H^+]/[NH4^+]

[2]:加水分解定数Khの公式の中に、電離定数Kbと水のイオン積Kwを入れ込み公式化するために、水酸化物イオン濃度:☆[OH^-]を[1]式の分子と分母の両方に乗じる!

Kh=[NH3][H^+]☆[OH^-]/[NH4^+]☆[OH^-]

[3]:[2]の右辺の、「※[NH3]/[NH4^+]☆[OH^-]」の部分だけに着目すると、アンモニアの電離定数Kb:「※ [NH4^+]☆[OH^-]/[NH3]」をひっくり返した形になっています。つまり、電離定数Kbの「※ 逆数:1/Kb」として考えますと次の様になります。

(Ⅰ):「※ 電離定数Kb=[NH4^+]☆[OH^-]/[NH3]」をひっくり返した形にすると、

(Ⅱ):「1/Kb」=[NH3]/[NH4^+]☆[OH^-]

(Ⅱ)の「1/Kb」を、加水分解定数Khの右辺に代入すると、

Kh=[NH3]★[H^+]☆[OH^-]/[NH4^+]☆[OH^-]=★[H^+]☆[OH^-]/Kb

ここで分子の部分:「★[H^+]☆[OH^-]=Kw(※ 水のイオン積)」で表せる事から、これ等をまとめると、

Kh=[NH3]★[H^+]☆[OH^-]/[NH4^+]☆[OH^-]=★[H^+]☆[OH^-]/Kb=Kw/Kb  ∴Kh=Kw/Kb

が成立します!

【※ 化学平衡の法則より、電離定数:Kbと水のイオン積:Kwを公式化させる:(その2)!】

もう1通りは、電離定数Kbと加水分解定数Khをそのまま乗じ、水のイオン積Kwを求め公式化します!

Kb=[NH4^+]★[OH^-]/[NH3]

Kh=[NH3]☆[H^+]/[NH4^+]

KbとKhを乗じ合い、アンモニアNH3とアンモニウムイオンNH4^+をそれぞれ消去し合うと、

Kb×Kh={[NH4^+]★[OH^-]/[NH3]}×{[NH3]☆[H^+]/[NH4^+]}=☆[H^+]★[OH^-]=Kw  ∴Kb×Kh=Kw

この様に三者の関係が成立しますが、この後、〔その壱〕で酢酸ナトリウム:CH3COONaの場合と同様に補足説明致しますが、内容としましては同じ様な考え方として説明文は省略致しますので、再確認も兼ねて、〔その壱〕の補足説明と照らし合わせて頂けたらと思います。

補足説明
加水分解定数Khを基準に考えて、Khのアンモニウムイオン:NH4^+のモル濃度を0.10〔mol/L〕として加水分解する事から始まり、電離定数:Kb≒10^(-5)〔mol/L〕である事を利用し、加水分解定数Kh・電離定数Kb・水のイオン積Kwの公式の関係性について考えたいと思います。

(1.):Kh(=10^(-9)mol/L)=(b)[NH3=10^(-5)mol/L]☆[H^+=10^(-5)mol/L]/[NH4^+=0.10mol/L]

(2.):Kb(=10^(-5)mol/L)=[NH4^+≒0.10mol/L]★[OH^-=10^(-9)mol/L]/(b)[NH3=10^(-5)mol/L]

【※ [※ アンモニウムイオンNH4^+のモル濃度:0.10〔mol/L〕]-[※ 加水分解時に減少したアンモニウムイオンNH4^+のモル濃度:10^(-5)〔mol/L〕]+[※ 電離平衡時に増加したアンモニウムイオンNH4^+のモル濃度:10^(-9)〔mol/L〕]≒0.10〔mol/L〕  ∴ 残ったアンモニウムイオンNH4^+のモル濃度は、最初のモル濃度:0.10〔mol/L〕とさほど変わらないと言える!】

以上の事から、(1.)のKhと(2.)のKbを乗じると、次式が成立します!

Kh(=10^(-9)〔mol/L〕)×Kb(=10^(-5)〔mol/L〕)=Kw(=1.0×10^(-14)〔(mol/L)^2〕)  ∴Kh×Kb=Kw

また、アンモニウムイオン:NH4^+と、アンモニア:NH3のモル濃度で表し、分子・分母で互いを消去し合うと、次式が成立します!

{(b)[NH3=10^(-5)mol/L]☆[H^+=10^(-5)mol/L]/[NH4^+=0.10mol/L]}×{[NH4^+≒0.10mol/L]★[OH^-=10^(-9)mol/L]/(b)[NH3=10^(-5)mol/L]}=☆[H^+=10^(-5)mol/L]×★[OH^-=10^(-9)mol/L]=Kw(=1.0×10^(-14)〔(mol/L)^2〕)  ∴Kh×Kb=Kw

以上2通りが、加水分解定数Kh、電離定数Kb、水のイオン積Kwの関係性を公式化したものです。これを基準に致しまして変形式と称するものと連携させ問題を解いて行きましょう!

なお、「※ Kh、Kb、Kwの公式関係!」は、

【※ Kh=Kw/Kb 】

の様に、非常に重要な公式としても表す事が出来るために、勝手ながら変形式と称するものにも利用させて頂きますので御了承下さい!

4.変形式をイメージして、塩の加水分解の仕組みを解き明かそう!

【※ 変形式を一気にインプットして、塩の加水分解の問題を解いてみよう!】
変形式を扱ってpH等の問題を解くというやり方は今までやって来ましたが、今回も上画像の変形式と称するものを理解して頂いた上で、試してもらえたらと思います。

また問題の方も、皆さんが出来るだけ順追って流れが理解出来ます様に作成してありますが、通常の問題とは異なり、今回もあえて必要以上に作成してある場合もありますので、何卒御了承下さい!

【※ 変形式に、加水分解定数Kh・電離定数Kb・水のイオン積Kwの関係公式を利用しよう!】
(Ⅰ):「※ Kh=Kw/Kb 」(Ⅱ):「※ Kb=Kw/Kh 」(Ⅲ):「※ Kh×Kb=Kw 」

の3公式につきましては、変形式の中には記載されていませんが、変形式と同様の重要な公式として一まとめに理解して頂くという意味で、

「※ 変形式+塩の加水分解の重要公式!」

の様に上画像で表していますので、是非共通因子としてインプットされておかれ、応用化して頂けたらと思います。

また(6)の、[OH^-]=Kw/√cKh=√(Kb・Kw/c)ですが、Kw=√Kw^2、√cKh=√(c・Kw/Kb)より、

[OH^-]=Kw/√cKh=√Kw^2/√(c・Kw/Kb)=√Kw^2×√(Kb/c・Kw)=√(Kb・Kw/c)

としてお考え下さい。それでは、これ等を基に問題を解いて行きましょう!

〔問.1〕0.10mol/Lの塩化アンモニウムNH4Cl水溶液の各問いについて答えよ。 ただし、アンモニアの電離定数Kbを1.8×10^(-5)mol/L、水のイオン積を1.0×10^(-14)(mol/L)^2、1.8^(-1)=0.56、√1.8^(-1)=0.75(※ 2回使用する事!)、 √0.56=0.75、log(10)[7.5]=0.88とする。

[1]:この水溶液の加水分解定数Khを求めよ。

条件:1.8^(-1)=0.56より、

Kh=Kw/Kb=(1.0×10^(-14))/(1.8×10^(-5))=(1.0/1.8)×10^(-9)=1.8^(-1)×10^(-9)=0.56×10^(-9)=5.6×10^(-10)  ∴Kh=5.6×10^(-10)〔mol/L〕

[2]:加水分解度h求めよ。

√1.8^(-1)=0.75より、

h=√Kh/c=√(Kw/c・Kb)=√(1.0×10^(-14)/(0.10×1.8×10^(-5))=√(1.0/1.8)×10^(-4)=√(1.8^(-1))×10^(-4)=0.75×10^(-4)=7.5×10^(-5)  ∴h=7.5×10^(-5)

[3]:水素イオン濃度:[H^+]を加水分解定数Kh、加水分解度h、電離定数Kbより、3通り求めよ。

(Ⅰ):3通り全て変形式(5)より、

[H^+]=ch=0.10×7.5×10^(-5)=7.5×10^(-6)  ∴[H^+]=7.5×10^(-6)〔mol/L〕

(Ⅱ):条件:√0.56=0.75より、

[H^+]=√cKh=√(0.10×5.6×10^(-10))=√(0.56×10^(-10))=0.75×10^(-5)=7.5×10^(-6)  ∴[H^+]=7.5×10^(-6)〔mol/L〕

(Ⅲ):条件:√1.8^(-1)=0.75より、

[H^+]=√cKh=√(c・Kw/Kb)=√(0.10×1.0×10^(-14)/1.8×10^(-5))=√(1.0/1.8)×10^(-5)=√1.8^(-1)×10^(-5)=0.75×10^(-5)=7.5×10^(-6)  ∴[H^+]=7.5×10^(-6)〔mol/L〕

[4]:塩化アンモニウムNH4Cl水溶液のpHを有効数字3桁で求めよ。

log(10)[7.5]=0.88より、

pH=-log(10)[H^+]=-log(10)[7.5×10^(-6)]=-(log(10)[7.5]+log(10)[10^(-6)])=-(0.88-6)=5.12  答.pH=5.12

〔問.2〕0.048mol/LのNH4Cl水溶液のpHを各問いより求めよ。ただし、加水分解度hを0.00010、水のイオン積を1.0×10^(-14)(mol/L)^2、log(10)[2.0]=0.30、log(10)[2.4]=0.38とする。

[1]:NH4Clの加水分解定数Khを求めよ。

変形式(4)より、

Kh=ch^2=0.048〔mol/L〕×(0.00010)^2=4.8×10^(-10)  答.Kh=4.8×10^(-10)〔mol/L〕

[2]:アンモニアNH3の電離定数Kbを求めよ。なお、小数第2位は切り捨てとする。

Kh=Kw/Kbより、

Kb=Kw/Kh=(1.0×10^(-14)〔mol/L〕^2)/(4.8×10^(-10)〔mol/L〕)≒2.08×10^(-5)〔mol/L〕  答.Kb=2.0×10^(-5)〔mol/L〕

[3]:この水溶液の水素イオン濃度:[H^+]を3通り求めよ。なお、小数第2位は切り捨てとする。

変形式(5)より、

(Ⅰ):[H^+]=ch=0.048×0.00010=4.8×10^(-6)  答.[H^+]=4.8×10^(-6)〔mol/L〕

(Ⅱ):[H^+]=√cKh=√(0.048×4.8×10^(-10))=4.8×10^(-6) 答.[H^+]=4.8×10^(-6)〔mol/L〕

(Ⅲ):[H^+]=√cKh=√(c・Kw/Kb)=√(0.048×1.0×10^(-14)/2.0×10^(-5))≒4.89×10^(-6)  答.4.8×10^(-6)〔mol/L〕

[4]:NH4Cl水溶液のpHを小数第2位まで求めよ。

[3]の[H^+]=4.8×10^(-6)〔mol/L〕と、  条件:log(10)[2.0]=0.30、log(10)[2.4]=0.38より、

pH=-log(10)[H^+]=-log(10)[4.8×10^(-6)]=-log(10)[2.0×2.4×10^(-6)]=-(log(10)[2.0]+log(10)[2.4]+log(10)[10^(-6)])=-(0.30+0.38-6)=5.32  答.pH=5.32

〔問3.〕0.10mol/LのNH4Cl水溶液のpOHを各問いより求めよ。ただし、アンモニアNH3の電離定数Kbを1.7×10^(-5)mol/L、水のイオン積を1.0×10^(-14)(mol/L)^2、√1.7=1.7^(1/2)、1.0/1.7^(1/2)=1.7^(-1/2)、1.0/1.7^(-1/2)=1.7^(1/2)、1.7^(1/2)=1.3、√1.7=1.3、log(10)[1.3]=0.11 とする。

[1]:この水溶液の水酸化物イオン濃度:[OH^-]を小数第1位まで2通り求めよ。

(Ⅰ):変形式(6)より、

条件:√1.7=1.7^(1/2)、1.0/1.7^(1/2)=1.7^(-1/2)、1.0/1.7^(-1/2)=1.7^(1/2)、1.7^(1/2)=1.3 から、

[OH^-]=Kw/√cKh=Kw/√(c・Kw/Kb)=(1.0×10^(-14))/{√(0.10×1.0×10^(-14))/√(1.7×10^(-5))}=(1.0×10^(-14))/{√(1.0×10^(-15))/★√(1.7×10^(-5))}=(1.0×10^(-14))/(★1.0×10^(-5))/★1.7^(1/2)=(1.0×10^(-14))/★1.7^(-1/2)×10^(-5)=(★1.0/★1.7^(-1/2))×10^(-9)=★1.7^(1/2)×10^(-9)=1.3×10^(-9)  答.[OH^-]=1.3×10^(-9)〔mol/L〕

【※ ここがポイント!√(ルート)の中から先に計算しよう!】
ここでは最初に√(ルート)の中から計算する事に着目して頂いて、

(1):まず√を元の形である、指数が分数の形に戻してやる!

(2):指数が分数の形を分数の形に、その分数の形を指数が分数の形に、これをまた分数の形に、最後に分数の形を指数が分数の形に、といった様に同じ意味を持つ形に変化させていく!

【※ 1.0/{√(1.0)/√(1.7)}=1.0/{(1.0)/√(1.7)}=1.0/{(1.0)/(1.7^(1/2))}=1.0/(1.7^(-1/2))=1.7^(1/2) 】

といった様な感じで計算してみて下さい。結構ややこしいですが、結局、二重の割算が2つ存在しているといった所が重要なポイントとなっています!

(Ⅱ):√1.7=1.3より、

[OH^-]=√(Kb・Kw/c)=√(1.7×10^(-5)×1.0×10^(-14)/0.10)≒1.3×10^(-9) 答.[OH^-]=1.3×10^(-9)〔mol/L〕

[2]:NH4Cl水溶液のpOHを小数第2位まで求めよ。

[1]の(Ⅰ)(Ⅱ)の、[OH^-]=1.3×10^(-9)〔mol/L〕、条件:log(10)[1.3]=0.11より、

pOH=-log(10)[OH^-]=[1.3×10^(-9)]=-(log(10)[1.3]+log(10)[10^(-9)])=-(0.11-9)=8.89  答.pOH=8.89

〔問4.〕0.10mol/LのHCl水溶液50mLに、0.10mol/LのNH3水溶液50mLを加え完全中和させ、塩化アンモニウム:NH4Clの塩が生成した場合の各問いに答えよ。ただし、NH3の電離定数Kbを、1.7×10^(-5)〔mol/L〕、水のイオン積:Kw=1.0×10^(-14)〔mol/L〕^2、√3.4=1.8、log(10)[1.8^(-1)]=-0.26とする。

[1]:中和させる前の、HCl水溶液とNH3水溶液の物質量〔mol〕を求めよ。

両水溶液のモル濃度〔mol/L〕と体積〔mL〕が同じである事から、物質量〔mol〕も同じであるため、

0.10〔mol/L〕×(50/1000)〔L〕=0.0050〔mol〕  答.0.0050〔mol〕

[2]:中和点に達し、生成した塩化アンモニウム:NH4Cl水溶液のモル濃度を求めよ。

0.0050〔mol〕÷(50+50/1000)〔L〕=0.0050〔mol〕÷(100/1000)〔L〕=0.0050〔mol〕×(1000/100)〔1/L〕=0.050〔mol/L〕  答.c=0.050〔mol/L〕

[3]:NH4Cl水溶液の水素イオン濃度[H^+]を求めよ。

[H^+]=√cKh=√(c・Kw/Kb)=√(0.050×1.0×10^(-14)/1.7×10^(-5))=√((0.10/2.0)×1.0×10^(-14)/1.7×10^(-5))=√(0.10×1.0×10^(-14))/√(2.0×1.7×10^(-5))=√(1.0×10^(-15))/√(2.0×1.7×10^(-5))=√(1.0×10^(-10))/√(2.0×1.7)=(1.0×10^(-5))/√(3.4)  答.[H^+]=(1.0×10^(-5))/√(3.4)〔mol/L〕

[4]:このNH4Cl水溶液のpHを有効数字3桁まで求めよ。

√3.4=1.8、log(10)[1.8^(-1)]=-0.26より、

pH=-log(10)[H^+]=-log(10)[√cKh]=-log(10)[√(c・Kw/Kb)]=-log(10)[(1.0×10^(-5))/√(3.4)]=-log(10)[(1.0×10^(-5))/1.8]=-log(10)[1.8^(-1)×10^(-5)]=-(log(10)[1.8^(-1)]+log(10)[10^(-5)])=-(-0.26-5)=5.26  答.pH=5.26

〔問.5〕0.30mol/LのHCl水溶液に、0.20mol/LのNH3水溶液30mLを加えて完全中和させた溶液のpHに関連する各問いに答えよ。ただし、NH3の電離定数:Kb=2.0×10^(-5)mol/L、水のイオン積:Kw=1.0×10^(-14)(mol/L)^2、2.0^(-1)=0.50、log(10)[2.0]=0.30、log(10)[3.0]=0.48、log(10)[10.0]=1.0とする。

[1]:中和点に達するまでに要したHCl水溶液の体積〔mL〕を求めよ。

HClの体積を、v〔mL〕とすると、

1×0.30〔mol/L〕×(v〔mL〕/1000〔mL/L〕)=1×0.20〔mol/L〕 ×(30〔mL〕/1000〔mL/L〕)より、

v=(0.006〔mol〕×1000〔mL/L〕)/0.30〔mol/L〕=20〔mL〕  答.v=20〔mL〕

[2]:加水分解定数Khを求めよ。

条件:2.0^(-1)=0.50より、

Kh=Kw/Kb=(1.0×10^(-14))/(2.0×10^(-5))=(1.0/2.0)×10^(-9)=2.0^(-1)×10^(-9)=0.50×10^(-9)=5.0×10^(-10)   答.Kh=5.0×10^(-10)〔mol/L〕

[3]:完全中和反応により生成した塩化アンモニウムNH4Clのモル濃度を小数第2位まで求めよ。

6.0×10^(-3)〔mol〕÷{(20〔mL〕+30〔mL〕)/1000〔mL/L〕}=6.0×10^(-3)〔mol〕÷(50〔mL〕/1000〔mL/L〕)=6.0×10^(-3)〔mol〕×(1000〔mL/L〕/50〔mL〕)=0.12〔mol/L〕  答.0.12〔mol/L〕

[4]:この水溶液の水素イオン濃度:[H^+]を求めよ。

変形式(5)より、

[H^+]=√(c・Kw/Kb)=√(0.12×1.0×10^(-14)/2.0×10^(-5))=√(0.6)×10^(-5)=√(6.0×10^(-1))×10^(-5)  ∴[H^+]=√(6.0×10^(-1))×10^(-5)〔mol/L〕

[5]:中和点におけるNH4Cl溶液のpHを小数第2位まで求めよ。

条件:log(10)[2.0]=0.30、log(10)[3.0]、log(10)[10.0]=1.0より、

pH=-log(10)[H^+]=-log(10)[√(6.0×10^(-1))×10^(-5)]=-log(10)[√(2.0×3.0×10^(-1))×10^(-5)]=-log(10)[(2.0^(1/2)×3.0^(1/2)×10^(-1/2))×10^(-5)]=-((1/2)log(10)[2.0]+(1/2)log(10)[3.0]-(1/2)log(10)[10.0]+log(10)[10^(-5)])=-((1/2)×0.30+(1/2)×0.48-(1/2)×1.0-5)=-(0.15+0.24-0.5-5)=5.11  答.pH=5.11

【※ ここが重要ポイント!】
pHを求める真数部分の「※ √(6.0×10^(-1))=√(2.0×3.0×10^(-1))」の√の中が少々ややこしい計算になっています。√の中を全く同じ意味の形に置き換えますと次の様になります。

「※ √2.0=2.0^(1/2)、√3.0=3.0^(1/2)、☆√10^(★-1)=10^(★-1/2)」

特に、「☆√10^(★-1)=10^(★-1/2)」が紛らわしい同じ意味を持ち、計算に使用していますので今一度御確認下さい!後は、それぞれの指数:(1/2)と(-1/2)をlog(10)の前に移動して、条件を代入するだけです!

塩の加水分解の原点︰〔その壱〕の記事、

前代未聞!「塩の加水分解」を制覇する原点、此処にあり!〔その壱〕

も是非御覧下さいね!

今回は、塩の加水分解の原点:〔その弐〕と称しまして、強酸と弱塩基の中和反応により生成する塩化アンモニウム:NH4Clの加水分解を中心に話を進めて参りました。酢酸ナトリウム:CH3COONa同様に変形式というものを試して頂けたでしょうか?

酢酸ナトリウム:CH3COONaの加水分解と、塩化アンモニウム:NH4Clの公式は真逆的関係にありますが、必ず両者共に問題を解いて行く公式の流れを所有しています。そのために1つずつ公式を分けて考えますと、どうしても何を基準にしたら良いのか解らなくなってしまいます。

私自身最初は、弱酸・弱塩基のpH等の求め方と、塩の加水分解によるpH等の求め方については、頭が混がらがって全く理解出来ませんでした。理由は1つずつ公式を頭の中で分けて考えていたからです。そこで自分なりに考え出したものが変形式でした!

特に難問の1つとまで言われる塩の加水分解については、頭の中に公式を一気にインプットする事で、少しずつ答えまで導ける様になって行きました。勿論、こんな大層に4段階に分けて変形式と称しましたものは全く存在しませんが、皆さんにとって少しずつでもお役に立てて行けたらと思い、思い切って紹介致して参りました。皆さんが、基本的な問題から1つずつ確実に御理解頂けたら幸いです!

また、どうしても問題を解くためには数学が必要であるために、出来るだけ様々なパターンの解き方を記載したつもりですので、こちらの方も今一度御確認頂けたらと思います。

「※ We can do it !やればできる!」

それでは、この辺でまた、  See you !